長沼事件 平賀書簡 35年目の証言 自衛隊違憲判決と司法の危機

長いタイトルとなったが、日本評論社が出版した本を小矢部市民図書館でリクエストしたら、富山県立図書館から取り寄せてくれた。資料編を除いて、読んでみたが、大事な内容がたくさんあったので、手元に置きたいと思い、自分でも購入することにして、注文した。
長沼事件で違憲判決を出した福島重雄裁判長が富山県出身で、イラク特措法が違憲だと判決した名古屋高裁の青山裁判長も富山県出身で、同じ富山県民として、たいへん誇りに思い、応援したい気持ちもあって、自分でもこの本を購入することにしたのも、もう一つの理由である。このお二人が昔、何かの席で声をかわしたことがあったと言うことは、この本で初めて知った。
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恵庭事件、長沼事件、イラク特措法判決と自衛隊が憲法違反かどうかを問うた裁判で、最高裁が、「違憲だ」とした地方裁判所の判断を、否定できていないことも、この本で初めて知った。
平和的生存権を憲法で保護される基本的人権として初めて認定したのが長沼事件での福島判決で、それがイラク特措法判決、そして、岡山地方裁判所で平和的生存権をより積極的に肯定する判決(2009年2月24日)へと発展させられていることも初めて知った。
岡山地裁の判決を紹介する。
「平和的生存権は、すべての基本的人権の基底的権利であり、憲法9条はその制度的規程、憲法第3章の各条項はその個別人権規程と見ることができ、規範的、機能的には、徴兵拒絶権、良心的兵役拒絶権、軍需労働拒絶権等の自由権的基本権として存在し、また、これが具体的に侵害された場合等においては、不法行為法における被侵害法益としての適格性があり、損害賠償請求ができることも認められる」(はしがきⅱ~ⅲ)

憲法が保障している司法の独立をめぐる闘いのなかから、今の司法改革の動きが生まれていると言うことも、初めて知った。政府・自民党、右翼による青年法律家協会攻撃から始まって、宮本判事補再任拒否事件へとその攻撃がエスカレートし、裁判所が国や行政に対して、事なかれ主義の陥っていく過程も、この本でよくわかる。

私が今日、長沼裁判に関して紹介したいのは、日本の安全保障についてである。
裁判では、たくさんの証人調べが行われた。現職自衛官、旧軍人、軍事評論家などである。
その一人に、遠藤三郎氏がいる。元陸軍中将、陸軍士官学校長、航空兵器総局長官などを歴任し、重慶爆撃の中止を進言した反骨の軍人だそうだ。
その証言は、たいへん貴重だと思った。
「軍備そのものの性格から見て、軍備で国防しようという考えがなくならんかぎり、膨張するのが軍隊の特質なんです。それは歴史が証明している。」(P68-69)
「遠藤は、細長い狭い国土に人口の密集という日本の構造的特殊性からして、軍隊による国防はできないと考える。参謀本部で年度作戦計画立案に参加した経験から、日本の領土を守るという発想は最初からなく、常に戦場は外地に求めていたという。」(P69)
「遠藤は自衛隊の作戦構想にも旧軍の発送が見られ、三矢作戦研究についても、『計画をつくると、とかく実行に移してみたくなる』ものだと警告する。」(P69)
「長沼のナイキミサイル基地についても、『あんなところにあっても何の役にもたたん。むしろ起爆剤というか、敵の攻撃の迎え水になる心配がある』という。」(P69)
この本で紹介されていた「将軍の遺言 遠藤三郎日記」1986年刊 毎日新聞社も、一度読んでみたいと思った。

もう一つ安全保障に関連して注目したのは、源田実の証言である。判決に証拠として提出され、引用されている講演の一部だそうだ。
「今の航空自衛隊というものが、何を目標として訓練をし、何をやるへべきかというと・・・防衛の主体というものはアメリカのもっている反撃力を守る。日本自体が反撃すれば日本の反撃力を守ることである。アメリカの反撃力が飛び立っている基地を守る。・・・単に第2次戦争当時の日本の防空部隊みたいな形で、ただ守るだけ、都市の防空だ、何の防空だと、守るだけの形においては、そうたいした意味をなさないと私は考える。」(P72)
つまり、自衛隊は米軍基地を守ることが任務だと現職自衛隊の幹部が考えていると言うことだ。

この証言が貴重だというのは、今、北朝鮮の核実験に関して、敵基地攻撃論が振りまかれているからだ。福島判決では軍事力によらない自衛の方法を示唆したことがきっかけで、その後、憲法学の中でも、軍事力に代わる総合的平和保障手段の共同研究が行われているそうだ。()P64) その論文も紹介されている。

私が23年前に市議会議員に初めて当選したとき、隣の席に座った自民党議員が「砂田君、私の目の黒いうちは絶対に戦争させないよ」と語ったことをはっきりと覚えている。S氏はもうなくなったが、戦争中、弾丸の下をくぐってたたかった経験からそういわれたものだ。
野中広務氏が赤旗のインタビューで、戦争体験のない若い政治家たちに「国会の審議が再び大政翼賛会的にならないように、若い人にお願いしたい」と発言しておられたが、これらの発言はたいへん貴重だと思う。

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